国民年金の保険者

 
保険者とは経営主体、実施機関のことです。国民年金の場合、保険者は政府(厚生労働省)で
 す。
 具体的な事務は、国(厚生労働大臣)から事務の委託、権限の委任を受けた日本年金機構が行
 いますが、一部の事務について市町村長(特別区の区長を含む)が行うこととしたり、法律により
 定められた共済組合に行なわせることができます。


 【 権限が委任されている主な事務(市町村の場合は、第1号法定受託事務に分類されます)】

 ■ 市町村(法12条、法105条、令1の2)

 @ 第1号被保険者の資格に関する届の受理、報告(取得・喪失・種別変更・氏名住所変更等)
 A 任意加入被保険者の資格に関する届の受理、審査(取得・喪失・氏名住所変更)
 B 第1号被保険者のみの期間を有する者の基礎年金裁定請求書の受理・審査
 C 寡婦年金・死亡一時金の請求書の受理、審査
 D 保険料免除に関する届出・申請の受理、審査


 ■ 日本年金機構

 @ 市町村から報告された各種届等(請求書、届出書、申請書)に関する事務(裁定、認定、承認)
 A 第3号被保険者の資格届に関する事務(受理、認定)
 B 保険料の収納及び滞納処分に関する事務
 C 被保険者・受給権者に関する調査・資料の提供
 D 基礎年金給付に関する事務


 ■ 共済組合(令1)

 @ 同一共済組合の加入期間のみを有する者の基礎年金裁定請求書の受理、審査
 A 共済組合加入期間中に初診(死亡)日のある障害(遺族)基礎年金裁定請求書の受理、審査

   ( 参考 )
 第1号法定受託事務(地方自治法第2条第9項)
 法律又は政令により都道府県、市町村等が処理することとされる事務のうち、国が本来果たすべ
 き役割に係るものであって、国において適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又
 は政令に特に定めるもの
 

 国民年金の被保険者

 
国民年金法に定める被保険者の要件に該当すれば、本人の意思に関係なく被保険者になる者
 で、3種類に分けられます。


 ■
第1号被保険者

 国民年金法7条1項1号に規定されることから第1号被保険者と呼ばれます。
 日本国内に住所のある20歳以上60歳未満の者であって、第2号被保険者及び第3号被保険者
 でない者。ただし、厚生年金保険法に基づく老齢給付等を受けることのできる者、いわゆる医療
 滞在ビザや観光・保養目的のロングステイビザでの来日している者は除かれます。
 自営業者、学生、フリーター、無職の人などが加入します。
 被用者というのは、雇用されている人のことです。また厚生年金保険の「老齢」にあたる支給事由
 は、共済では「退職」であることから「老齢または退職」という言い回しになっています。
 意外に思うかもしれませんが、たとえ無職であろうと失業中であろうと要件を満たす限り第1号被
 保険者です。所得が低いために保険料を納付できないのでれば、免除申請することになるでしょ
 うが、そのことと第1号被保険者になることを混同しないようにしてください。

 ■
第2号被保険者

 国民年金法7条1項2号に規定されています。
 厚生年金保険の被保険者が対象です。具体的には、民間企業に勤めている人、公務員などです。
 国民年金法7条1項2号に規定されていませんが、原則として65歳未満が対象です。65歳以上
 で第2号被保険者となるのは老齢厚生年金、老齢基礎年金その他の老齢又は退職を支給事由
 とする給付の受給権を持っていない場合です。

 ■ 第3号被保険者

 国民年金法7条1項3号に規定されています。
 第2号被保険者の配偶者で、その第2号被保険者に生計維持されている20歳以上60歳未満の
 者(被扶養配偶者といいます)。原則として日本国内居住が要件です。
 一般的には、夫が第2号被保険者で妻が第3号被保険者といったケースが多いでしょうが、妻が
 第2号被保険者で夫が第3号被保険者であってもかまいません。



 条文
被保険者の資格 (第7条)
 

 1 
次の各号のいずれかに該当する者は、国民年金の被保険者とする。

 @ 日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者であって次号及び第3号のいず
   れにも該当しないもの(厚生年金保険法に基づく老齢を支給事由とする年金たる保
   険給付その他の老齢又は退職を支給事由とする給付であって政令で定めるもの
   (以下「厚生年金保険法に基づく老齢給付等」という。)を受けることができる者、そ
   の他この法律の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定め
   る者※を除く。以下「第1号被保険者」という。)

 A 厚生年金保険の被保険者(以下「第2号被保険者」という。)

 B 第2号被保険者の配偶者(日本国内に住所を有する者又は外国において留学をす
   る学生その他の日本国内に住所を有しないが渡航目的その他の事情を考慮して
   日本国内に生活の基礎があると認められる者として厚生労働省令で定める者に限
   る。)であって主として第2号被保険者の収入により生計を維持するもの(第2号被
   保険者である者その他この法律の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚
   生労働省令で定める者※を除く。以下「被扶養配偶者」という。)のうち20歳以上
   60歳未満のもの(以下「第3号被保険者」という。)

 2 前項第3号の規定の適用上、主として第2号被保険者の収入により生計を維持す
   ることの認定に関し必要な事項は、政令で定める。

 
 ※その他この法律の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者

 1 日本の国籍を有しない者であって、出入国管理及び難民認定法以下「入管法」という。)の
   規定に基づく入管法別表に掲げる活動として法務大臣が定める活動のうち、本邦に相当
   期間滞在して、病院若しくは診療所に入院し疾病若しくは傷害について医療を受ける活動
   又は当該入院の前後に当該疾病若しくは傷害について継続して医療を受ける活動を行う
   もの及びこれらの活動を行う者の日常生活上の世話をする活動を行うもの

 2 日本の国籍を有しない者であって、入管法に基づく別表に掲げる活動として法務大臣が定
   める活動のうち、本邦において1年を超えない期間滞在し、観光、保養その他これらに類似
   する活動を行うもの
 
 ( 参考 )

 ■ 認定基準

 年間収入が130万円未満かつ第2号被保険者である配偶者の年間収入の2分の1未満(老齢
 や退職または障害を事由とする公的年金受給者については年間収入180万円未満となります)

 ■ 年間収入の考え方

 認定基準の年間収入の算出は、収入の種類によって違います。
 給与所得者や年金、恩給の受給者などの場合は、総収入額(総収入額なので各種控除を行う
 前の金額です)。
 資産所得(不動産の賃貸収入など)や事業所得の自営業者などは、総収入額から原材料費な
 ど必要な経費を控除した額。

 ■ 3つの生計維持 (厳格な順に、A→B→C)

 A 厳格な生計維持・・・健康保険、厚生年金で被扶養者と認定されるための生計維持
                (原則、対象者の年間収入が130万円未満)

 B やや緩和された生計維持・・・厚生年金の加給年金などが支給されるための生計維持
                (原則、対象者の年間収入が850万円未満) 

 C 緩やかな生計維持・・・労災保険の遺族補償年金などが支給されるための生計維持
                (年間収入の額は問われない。生計を共同して担っているという意味合
                 いで、いわゆる夫婦共稼ぎでも認められる程度の生計維持)

 ■ 外国の年金制度加入による適用除外
   (社会保障協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律7条)

 国民年金法による年金給付に相当する給付を行うことを目的とする外国の年金制度に加入する
 者であって、政令で定めるものは法7条1項の規定にかかわらず被保険者としないことになって
 います。

 

 過去問
平成25年 択一 問2エ
 日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者であっても、厚生年金保険法に基づく遺族
 給付の受給権者は、第1号被保険者とはならない。
 
 (答え) ×
 老齢給付等と違い第1号被保険者となる。
 
平成23年 択一 問6D
 認定対象者の年間収入とは、年金、恩給、給与所得、資産所得など、継続して入る(又はその
 予定の)恒常的な収入であり、傷病手当金や失業給付金などの短期保険の給付は除かれる。
 
 (答え) × 
 傷病手当金や失業給付金も恒常的な収入とされる。
 
平成26年 択一 問7C(改題)
 65歳以上の厚生年金保険の被保険者は、老齢又は退職を支給事由とする年金給付の受給
 権を有していなくても、障害を支給事由とする年金給付の受給権を有していれば、第2号被保
 険者とならない。
 
 (答え) × 
 障害を支給事由とする年金給付の受給権を有していれば第2号被保険者になる。
 
平成25年 択一 問5イ
 外国人で住民基本台帳に記録されない短期滞在者については、日本国内に住所を有すること
 が明らかになった者であっても第1号被保険者としては適用されない。
 
 (答え) × 
 外国人で住民基本台帳に記録されない短期滞在者等のうち、日本国内に住所を有することが
 明らかとなった者(いわゆる医療滞在ビザや観光・保養目的のロングステイビザでの来日者は
 除く。)についても適用の対象とされる。
 
平成25年 択一 問2オ
 厚生年金保険の在職老齢年金を受給している夫が65歳に達した際、日本国内に住所を有する
 第3号被保険者である妻が60歳未満であれば、その妻は第1号被保険者となり、法定免除又
 は申請全額免除に該当しない限り、国民年金の保険料を納付しなければならない。
 
 (答え) ○ 
 その通り。第1号被保険者となり、国民年金の保険料を納付しなければならない。
 
平成24年 択一 問5E
 第2号被保険者の被扶養配偶者と認められる場合であっても、20歳以上の大学生は、第3号
 被保険者ではなく第1号被保険者としての適用を受け、学生の保険料納付特例の対象になる。
 
 (答え) × 
 第2号被保険者の配偶者であって主として第2号被保険者の収入により生計を維持するもの
 (第2号被保険者である者を除く。)のうち20歳以上60歳未満であれば、大学生であっても、
 第3号被保険者とされる。
 
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