国民年金の給付 (老齢基礎年金)

 
 ■ 国民年金の給付


@ 老齢基礎年金  全国民共通の基礎年金
A 障害基礎年金
B 遺族基礎年金
C 付加年金  第1号被保険者独自の給付
D 寡婦年金
E 死亡一時金

 ■ 老齢基礎年金

 簡単に言うと、年をとって若いときのように働けなくなったときの生活保障です。

 ■ 支給要件

 @ 65歳に達していること
 A 受給資格期間が10年以上あること
 B 保険料納付済期間又は保険料免除期間があること

 ■ 受給資格期間

 受給資格期間とは、保険料納付済期間、保険料免除期間、学生納付特例期間、若年者納付猶
 予期間を足した期間です。
 受給資格期間が10年に足りないときは、合算対象期間なるものを、文字通り合算して、10年以
 上あればOKです。
 これでも、10年に足りないときは、任意加入することになります。

 合算対象期間とは、受給資格期間には算入できるが、年金額には反映しない期間のことで、例
 えば、任意加入することができたのに任意加入しなかった期間が当てはまります。
 合算対象期間は、やたら複雑な言い回しのものが多く、数が多いので、あまり深入りしないほう
 が賢明です。
 試験対策としては、テキストで取り上げているものを押さえておけば十分でしょう。もしそれを超
 えるところから出題されたときは、みんなもできないと割り切りましょう。

 ■ 保険料納付済期間

 @ 第1号被保険者期間のうち 保険料を納めた期間
 A 第2号被保険者期間のうち 20歳以上60歳未満の期間
 B 第3号被保険者期間
 C 第1号被保険者期間のうち産前産後の保険料を納付を要しないものとされた期間

 第1号被保険者と第3号被保険者は、被保険者の定義の中に、「20歳以上60歳未満」という年
 齢要件が含まれているため、納付済期間には年齢の幅が入っていません。

 第1号被保険者期間は、保険料を納めた期間となっているのに、2号と3号にないのは、直接保
 険料を納めるのは第1号被保険者だからです。
 「3号が保険料を払っていないというのはわかるけど、2号は月々の給料から保険料が天引きさ
 れて保険料を負担しているのに・・・。」と思うかもしれませんが、天引きされているのは厚生年金
 の保険料であって、国民年金の保険料ではありません。(念のため)
 なお、任意加入被保険者、特例任意加入被保険者は、第1号被保険者と同じと考えます。

 ■ 保険料免除期間

 第1号被保険者だけに認められた制度です。もともと直接国民年金保険料を納付していない第
 2号被保険者や、第3号被保険者には関係ありません。
 そもそも、第1号被保険者というのは、具体的には、自営業、学生、失業中の人、夫が自営業の
 専業主婦、妻が自営業の専業主夫といった人たちですが、これらの人は、国民年金の保険料を
 直接納めている人なので、所得が少ない場合など保険料が免除される制度があります。

 
保険料の免除には、法定免除、全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除があって、こ
 れらの免除を受けた期間をそれぞれ「保険料全額免除期間」、「保険料4分の3免除期間」、「保
 険料半額免除期間」、「保険料4分の1免除期間」といい、これらの期間を合算した期間が「保険
 料免除期間」となります。

 当然ながら、免除を受けた期間があると年金額は少なくなります。ただし、10年以内ならば後か
 ら追納することができ、追納した期間は、保険料納付済期間として扱われます。
 なお、任意加入被保険者や特例任意加入被保険者は、免除を受けることができません。
 そもそも、任意加入や特例任意加入は、「年金が少ないから、増やしたい。」、あるいは、「10年
 の受給資格を満たせないから、それをクリアーするために入る。」といった目的で加入しますが、
 任意である以上、「好きで保険料を払っているのだから免除なんてないよ!」という理屈です。

 ■ 老齢基礎年金の額



@ 20歳から60歳まで40年間(480月)が全部保険料納付済期間のとき

  老齢基礎年金の額 → 780,900円×改定率 ・・・ (1)

 


A 20歳から60歳まで40年間(480月)に保険料納付済期間でない月があるとき

  A:保険料納付済月数
  B:保険料全額免除月数×2分の1 
  C:保険料4分の3免除月数×8分の5
  D:保険料半額月数×4分の3
  E:保険料4分の1免除月数×8分の7

  老齢基礎年金の額  → (1)×(A+B+C+D+E)÷480月

 年金額は、フルペンション減額方式といって、全期間にわたって保険料が納付されているときの
 満額(フルペンション価額)を基に、保険料が納付されていない期間のものを減額する方法が取
 られています。
 こうした方法を取るのは、強制加入である以上、被保険者期間はすべて保険料納付済期間にな
 っているはずというのが根底にあるからかもしれません。
 また、免除があるときに、免除分そのままを反映させないで、2分の1や4分の3としているのは、
 年金は保険料だけで賄わないで、国庫負担(税金)があるからです。


 国民年金の給付 (障害基礎年金)

 ■ 障害基礎年金
 
 障害基礎年金は、ケガや病気で重い障害を負ったときに支給される年金です。

 ■ 支給要件

 @ 障害の原因となった傷病の初診日において次の(A)、(B)いずれかに該当していること
   (A) 被保険者であること
   (B )被保険者であった者であって、日本国内に住所を有し、かつ、60歳以上65歳未満であ
      ること
 A 障害認定日において、その傷病により障害等級1級又は2級に該当する程度の障害の状態
   にあること
 B 初診日の前日において保険料納付要件を満たしていること

 ■ 初診日

 初診日とは、障害基礎年金の対象となる障害の原因となる病気やけがについて初めて病院に
 かかった日のことです。
 (A)はいいとして、問題は(B)。
 どんな人が当てはまるかというと、自営業が典型ですが、60歳になって、第1号被保険者でなく
 なった人です。
 「被保険者であった者であって、」というところに注目してください。
 もし(B)がないと、60歳〜64歳の間は任意加入なので、任意加入していなければ、障害基礎年
 金が支給されないことになってしまいます。

 ■ 障害認定日

 障害認定日とは、障害の程度を厚生労働大臣が認定する日のことで、次のいずれか早い方です。
 @ 初診日から起算して1年6月を経過した日
 A 初診日から起算して1年6月を経過する日までに傷病が治った場合においては、その治った日

 
「治った」の意味合いは、元に戻った状態を指すのではありません。
 もちろん、元に戻ることもあるでしょうが、症状が固定し治療の効果が期待できない状態。
 要は、これ以上は良くなる見込みがないと医者が判断したときのことです。
 たとえ、治っていなくても、1年6月を経過すれば障害認定を行います。これは労災保険の障害
 補償給付と大きく違う点なので、注意してください。
 労災の障害補償給付は、症状が固定するまで、何年かかろうと支給されませんが、国民年金や
 厚生年金は、障害認定を行います。

 ■ 保険料納付要件

 次のどちらかを満たす必要があります。
 @ 初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があ
   る場合には、その期間のうち保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が3分の
   2以上あること
 A 初診日が令和8年3月31日以前の場合、初診日の前々月までの直近の1年間に保険料の
   滞納がないこと(初診日において65歳未満に限る。)


 保険料納付要件は、保険料がどの程度納められているかをみるものです。
 要は、日ごろ、真面目に保険料を納めているかどうかということです。
 @で言っているのは、裏を返せば、保険料滞納が3分の1を超えていればダメということです。
 もって回ったよう表現になっていますが、ちゃんと意味があって、「初診日の前日」で保険料の納
 付状況をみるのは、もし「初診日」とすれば、長期間保険料を滞納していたときであっても、あわ
 てて保険料を納付することができるからです。

 それがなぜ問題なのか。
 そもそも、何もないときに保険料を払っておいて、万一のことが起きてしまったときに給付(ここで
 は年金)を受ける。というのが保険の原理です。
 何か起きてしまった後に保険料を払って給付を受けるのは、後出しジャンケンみたいなものでこ
 の原理に反するわけで、それは許さないということです。
 「初診日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間がある場合には」のフレーズは、
 国民年金の保険料の納期限が、「翌月末日」となっていることの兼ね合いからです。

 例えば、4月28日にケガをして、すぐに病院に行ったとすると、初診日は4月28日。
 初診日の前日は、4月27日。
 4月27日までに保険料の納期限が到来しているのは、2月分まで(3月の保険料は、翌月末日
 である4月30日が納期限なので、4月27日時点では、まだ未到来。)ということですね。

 ■ 障害基礎年金の額

  障害等級に応じて次の金額となります。


@ 障害等級1級  780,900円×改定率×1.25
 ※ 2級の1.25倍
A 障害等級2級  780,900円×改定率
 ※ 老齢基礎年金の満額と同額

 老齢基礎年金のように受給資格期間が必要というようなことはなく、保険料納付済期間が、短く
 ても受給額は変わりません。


 障害基礎年金の受給権を得たとき、その受給権者によって生計を維持されている18歳になって
 初めての3月31日を迎えるまでの子あるいは1級、2級の障害を持つ20歳未満の子がいる場合
 には、次の額が加算されます。


@ 1人目・2人目の子  1人につき 224,700円×改定率
A 3人目以降の子  1人につき  74,900円×改定率

 国民年金の給付 (遺族基礎年金)

 
 ■ 遺族基礎年金

 遺族基礎年金は、生計の中心となって働いていた人が死亡した場合に、残された配偶者又は子
 に対して、生活の安定を図るため、一定の所得を保障することを目的として支給されます。

 ■ 支給要件

 次のいずれかに該当する者が死亡したときに、子のある配偶者又は子に支給されます。
 @ 被保険者
 A 日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の被保険者であった者
 B 老齢基礎年金の受給権者
 C 老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている者

 @、Aは、障害基礎年金にもありました。
 「子のある配偶者」とは、被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時、その被保険者又は
 被保険者であった者によって生計が維持され、かつ、下の要件に該当する「子」と生計を同じくし
 ていた配偶者のことであり、「子」とは、被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時、その
 被保険者又は被保険者であった者によって生計が維持され、かつ、下の要件に該当した子のこ
 とです。

 @ 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子
 A 20歳未満であって障害等級1級又は2級に該当する障害の状態にある子

 @、Aとも、現に婚姻していないことが必要です。忘れがちなので注意しましょう。

 
早い話が、配偶者が受給するには、上の要件を満たす子と一緒に生活しているということが必要
 なわけで、配偶者単身では受給できません。
 逆に、「子」が受給する場合は、親はいなくてもOKです。
 では、ごく一般的な母子家庭の話(「子のある配偶者」と「子」の両方がいる場合)にどうなるかと
 いうと、このときは、子のある配偶者が受給し、子の遺族基礎年金が支給停止されます。
 つまり、配偶者が受給し、子は支給停止扱いになるということですね。
 ついでに言うと、子が受給できるのは生計を同一にする親がいない場合ということになります。

 ■ 保険料納付済期間

 
 障害基礎年金の保険料納付要件にある「初診日」を「死亡日」に読み替えてください。
 考え方も障害基礎年金のところと同じです。

 ■ 遺族基礎年金の額


 遺族基礎年金の額  780,900円×改定率 + 子の加算額

 ※ 老齢基礎年金の満額と同額
 

 子の加算額
  第1子・第2子
 1人につき 224,700円×改定率
 子の加算額
  第3子以降
 1人につき  74,900円×改定率

  【 例 】 子が3人のケース

子のある妻が受給権者である場合
子が受給権者である場合
基 本
780,900円×改定率
780,900円×改定率
第1子
224,700円×改定率
第2子
224,700円×改定率
224,700円×改定率
第3子
74,900円×改定率
74,900円×改定率


← 戻る